今年の桜は朝寝坊さんで、やっと咲いたかと思いきや、激しい雨であっという間に咲き誇る花びらを散らしてしまいました。
さて、以前の記事「ブラオリオ①」でも触れましたが、私の最寄駅である折尾駅の周辺は現在大規模な再開発の真っ最中です。
工事が一段落した駅前は賑わっていますが、鹿児島本線の高架線路の向こうに廻ると、今や絶賛工事中です。
こちら側は、先代駅舎があったところです。
工事現場のすぐ近くには、大正3年に建設された西鉄の高架線路跡があります。
大正3年と言えば、1914年。110年前です。現在は使われていません。
このアーチ高架橋は、味わい深い外観だけでなく、もっと大切な意味があるので、一部が保存されています。
「ねじりまんぼ」という特殊な工法で建設されていて、国内に現存する同工法では最大規模と言われています。
「ねじりまんぼ」というのは、線路と道路の交差が直角ではなく、斜めのために、斜めなアーチのことを言います。
このアーチ橋は交差が75度だそうです。実際、現地に立つと、その微妙な角度からくる違和感というか、異世界感を感じます。
このアーチ橋の近くに、ブラタモリでも紹介があった堀川が通っています。この辺りでは新々堀川といいます。もともとは江戸時代黒田福岡藩の頃、筑豊の産物を洞海湾の湊へ運ぶために開削されたものですが、時代が下り、文明開化の頃には産業に欠かせない石炭を運んでいました。
その川沿いに、これまた味わい深いと言える飲食店が軒を連ねていました。
「いました」というのは、再開発のため立ち退きとなったからです。
この飲食店街には、かつて銭湯もありました。いつか入ってみたいと思っていましたが、かなわぬままでした。
お店の明かりが川面に映えて、あちこちから人々の笑い声が聞こえていました。
ここには、笑顔があって、涙があって、人々の物語が確かにありました。
それも、もうすぐ消えてしまいます。
再開発が悪いとは言いませんが、消えていくものへの惜別の念を禁じ得ません。
それはちょうど、散りゆく桜の花びらに、もののあはれを感じるように。
しかし・・・
花びらが散ったその先には必ず新緑がいぶき、また花びらが咲き誇るように、折尾の町は新しく生まれます。
そこでは、どんな物語が紡がれていくのでしょうね。
では、また。