鹿の谷温泉は、国道273号から右折(三国峠を背に)して接続道路を2~3分行ったどん詰まりにある。友人は「秘湯中の秘湯」というが、鳴子郷温泉や、乳頭温泉よりも幹線道路から近い。
鉄筋コンクリート造りの建物で、「秘湯」という言葉から崩れそうな木造旅館を勝手にイメージしていた私にはちょっと意外だった。
一人で切り盛りしていた女将さんが高齢となり、後継者問題があって一時は廃業も検討されたそうだが、周囲の方の尽力もあり、後継者も見つかって営業継続となったという。
素泊まりで3,000円。
布団セットは別料金なのだが、この日は特別にご提供いただいた。
それまで自前のシュラフで体中が痛かった私には何ともありがたいご厚意だ。
2階建ての2階の部屋に荷物を入れて、建屋内を見て回ると、冷蔵庫やレンジを備えた炊事場、ちょっとした読み物を置いてある談話スペース(フロント部分)があった。本来湯治湯なのだとか。
一息ついてから浴場へ行った。
ここは、更衣室こそ男女別々になっているが、中は混浴だ。
浴槽は泉質ごとに区切ってある。
「ナトリューム泉」「鉄鉱泉」「カルシューム泉」
鉄鉱線のみやや黒く、他の二つはちょっと青い。
石鹸など備え付けのものはなく、友人から借りた。
やがてぽかぽかと温まってきた頃、露天風呂に行ってみた。
ドアを出て数十歩歩いたところにそれはある。
既に先客がいて、友人と楽し気に談笑していた。
挨拶をかわし、ざぶんと湯につかる。
わずかな照明しかなく、辺りはシンとしている。
先客によるとさっきまで鹿の親子がえさを探して近くに来ていたそうだ。
交通は意外と便利だったが、なるほどここは辺りに人家も何もない秘湯なんだな。
その夜は、温泉から上がって、さっきコンビニで買った缶ビールをあけて早々に眠った。久々の布団が本当に有難かった。
翌朝目覚めると、窓の外には紅葉の風景が広がっていた。
今日も快晴だ。
とりあえず朝風呂に行く。
昨夜と同じ面々が既に入浴していた。
さすが「秘湯」に来る通の方々だ。朝風呂を欠かさない。
昨夜は暗くて何も見えなかったが、こうしてみると深い渓流の崖にあり、周囲は紅葉に囲まれていていい感じだ。
風呂上り、屋外で喫煙しているとみなさんもやってきて世間話の花が咲く。ここでも友人のモンキー改は質問攻めにあっていた。
名残惜しいが鹿の谷温泉を後にして、いよいよ美瑛・富良野へ向かう。
私は南下して南富良野に入るつもりだったが、どうしても三国峠が見たい友人の希望により、再び三国峠を目指す。
昨夜は何も見えなかったが、三国峠の道は眺めの良い最高の道だった。
ほぼほぼ原生林の風景は、九州の者にとってとても新鮮で美しく感じる。
それにこの時は紅葉していて、とても鮮やかだった。
上に掲載した写真の川には3頭の親子と思われる鹿が川を渡っていた。やや発見が遅れ写真に残せなかったことが残念だ。
美しい風景に圧倒されながら39号へ合流し層雲峡へ。
そこのコンビニで一服。
今回は南下せず北上したので、本来富良野観光だった今日の予定を変更し、美瑛の丘巡りをすることにした。何しろぬけの良い好天なのだから。
-その6に続く-